くまのて法律事務所

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台湾で車輌事故に遭って、人に怪我をさせてしまった時の対応(その2)警察の呼び出し編

目次

1、警察による事情聴取の通知を無視してはいけません

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前回の記事で、車輌事故に関する刑事手続の概要と関連資料の取得について説明しました。今回は、くまのて弁護士の経験から、実際にどのように対処すればいいかについて紹介します。

確かに、最初は警察による事情聴取からだよね。

そうですね。被害者が警察に過失傷害罪で被告を告訴した場合、基本的に警察が事情聴取を行う旨の通知書を被告に送付します。当該通知書には事情聴取の時間と事由が記載されています。

ほほ。通知を受けたとしても必ず事情聴取に行く必要がある?

警察の呼び出しを無視したら、逮捕される可能性があります。

ビクッ( ̄┏_┓ ̄;)!!. ビクゥッ

事情があってどうしても行けない場合は、警察官と相談し事情聴取の時間を変更してもらった方が良いと思います。

なるへそ。事情聴取について留意すべき点を教えてください。

 

2、事情聴取に行く前、尋ねられうる問題を整理しましょう

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事情聴取の際、警察は事故について被告から話を聞き、その返答を踏まえ供述調書を作成することになります。

警察には何を聞かれるのだろう。

基本的に警察内部のテンプレートなので(発生経緯、道路状況など)、経験ある弁護士に相談すれば、事故当時の状況に基づいて適正な返答を事前に整理することができます。

なるほど。でも事件当時の状況に一番詳しいのは被告人だよね。じゃあわざわざお金払って弁護士なんて呼ぶ必要がある?

確かに弁護士は当事者ではありません。ただし、手続に詳しくない被告が事情聴取で緊張して自分に不利な陳述をしてしまうことがよくあります。そして、調査の初めの陳述が大変重要で、間違えた陳述をしてしまうと、あとで変更することが困難になります。

そうだね、じゃあ事情聴取の時、自分で陳述せず全部弁護士に頼んでもよくない?

残念ながら、それはできません。

Σ(`0´*)ヌォ

事情聴取での対応は、以下の通り説明しますね。

3、事情聴取では余計な陳述を控えるようにしましょう

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事情聴取で弁護士に陳述を委ねることができませんので、黙秘権を行使しなければ、自らの陳述が必要です。

刑事訴訟法上、事情聴取の時、被告には黙秘権が存在します。事情聴取において話したくないことがあれば、話す必要はありません。しかし、黙秘権があるとしても、事実を争っていない場合にまでむやみやたらと黙秘するのであれば、犯行を行った後の態度が悪いと認められ、検察官に不利な印象を与える恐れがあります。

じゃあ、やっぱり黙秘権を行使しない方が良いよね。

実際の状況や案件の性質によりますね。

車両事故により起こした過失傷害罪において、犯罪構成要件はとても簡単です。過失行為、傷害事実の両者に因果関係があれば、過失傷害罪に該当します。実務上、被告の過失割合がたった1%であるにもかかわらず、検察官に起訴されることがよく見られます。
このような案件において「自分は無過失」「全部相手のせいだ」と主張し続けることは、検察官に対してあまり意味がないように思われます。理由は三つあります。

1、過失の有無は検察官が判断しますし、通常検察官も車両事故鑑定会の意見を尊重します。
2、注意不足だったからこそ事故が起こったのであって、自分が無過失であることを証明することは極めて困難です。
3、「自分は無過失」「全部相手のせいだ」と主張し続けることは、被害者に和解の誠意を持っていないと思われ、示談に支障が出る場合がよくあります。特に台湾文化においては、態度と誠意の方が重視されます。

なるほど。では、自分に不利にならないように、どのように陳述すればいいのかな。

基本的に「被害者との衝突が突然で、反応時間が不足したことで避けられない状態に陥ってしまった」という方向で主張することをお勧めします。

 

4、対策・終わりに

車輌事故は日常的な出来事ですが、刑事手続が開始されますし、対応上でわずかな不手際でもあれば、被告の人生に大きな影響を与えます。そのため、慎重な対応が必要です。上記の内容を踏まえ、事情聴取での対応策を以下の通りにまとめてみました。
1、事情聴取通知書がきたとき、弁護士を委任し、事件の経緯を整理する。
2、事情聴取の時、弁護士に同席してもらい、捜査に協力する姿勢で対応する。そして、余計なことを言わないようにする。
3、被害者と対面する機会があれば、和解する誠意を持ち、負傷の状況などを確認する。

 

なるほど。やっぱり弁護士が重要だよね。

その通りです。次回は検察官による取り調べについて説明しますね。