台湾で車輌事故に遭って、人に怪我をさせてしまった時の対応(その1)資料収集編
目次
1、車輌事故が起こると刑事手続が開始する
台湾に来て、台湾人の交通マナーに驚いている日本人は少なくないと思います。実際、台湾では想像以上に交通事故が多く、去年追突事故で200人以上の死亡者もでてかなり深刻な問題になっています。
ぼく台湾で運転した時、常に恐怖を感じてるなあ。横から急に現れる遅い年寄りが多いな。。
よく台湾にいる日本人に言われます。特に事故で人を負傷させた時、対処法がわからなくてパニックに陥ってしまいますね。
そうそう、とても知りたいなあ。ぼくもたまに部品とかをクライアントへデリバリーしてる。
くま社長も配達しますか。
今の時代大変だよ。ぼくやらないとまわらないなあ。
お疲れ様です。交通マナーの改善については弊事務所の専門ではありませんが、今回の記事はくまさんのように車輌事故の対応を心配している人に用意しました。
車輌事故で人を負傷させると、台湾刑法に定める過失傷害罪に該当する可能性があるので刑事手続が開始します。そこで適切に対応できるように刑事手続の流れを理解する必要があると思われます。詳細は下記の表で説明します。
順番 | 刑事手続 | 説明 |
1 | 警察による事情聴取 | · 被害者が警察に通報した場合、警察が事情聴取を行う。 · 事情聴取において警察は監視カメラ映像の開示(あるのであれば)、事件発生当時の状況を確認などをする。 · 情報収集が終わった後、警察は事件に関する資料・証拠を送検する。 |
2 | 検察官による取り調べ | 送検した後検察官が取り調べを行い、場合によっては鑑定を行う(被害者が死亡した場合、鑑定を行う可能性は高い)。 |
3 | 車輌事故鑑定委員会による交通事故鑑定 | ·検察官が鑑定を行うことを決めた場合、通常「車輌事故鑑定委員会(以下、「車鑑会」をいう)」に鑑定を委託する。 ·車鑑会は会議を開催し、被告と被害者双方の意見を尋ねる。 |
4 | 調停会議 | 被告と被害者双方で示談がまとまらない場合、検察官は調停会議の開催を申請する可能性がある。 |
5 | 検察官による取り調べ(2) | 鑑定結果、調停結果が出次第、検察官は被告を起訴・不起訴するか、あるいは起訴猶予を課すかを決定する。その前に通常、検察官はもう一度取り調べを行う。 |
6 | 刑事裁判・民事裁判 | ·起訴された場合、刑事裁判・民事裁判になる。 ·刑事裁判では刑事罰の程度を決め、民事裁判では損害賠償の額を決める。 |
2、警察に交通事故の関連資料の取得を申請する
いっぱいの手続があるなあ。とても時間がかかるかな。
そうですね。通常、送検後、検察官が8ヶ月以内に起訴・不起訴・起訴猶予の判断を行いますが、実際の状況に応じ(例えば、鑑定結果が出るまで時間かかる場合)、8ヶ月以上かかる可能性もあります。
ヽ◎д◎ ))ゝヒョエー
大変な過程ですが、気を抜かず最後まで見ていきましょう。
わかった。じゃ、まずは警察による事情聴取に行く前、やるべきことを聞かせてもらう。
状況把握のため、まずは警察署に事故関連資料を申請することですね。
ほほ。それは何?
事故関連資料は、①事故現場の写真・図表のコピー、②道路交通事故初步分析研判表及び③監視カメラ映像です。それぞれの内容と取得方法を説明します。
①事故現場の写真・図表のコピー(中国語:現場圖、照片)
事故現場の写真・図表のコピーは事件当時当事者の距離、物損・人身傷害、現場処理の状況、ブレーキ跡並びに路面の傷などの情報を記載する書面です。事件担当の警察署に申請することができます。
②道路交通事故初步分析研判表(中国語:初判表)
道路交通事故初步分析研判表には、事故発生原因や交通規則に違反した事実があるかについて、事故処理の警察官による初歩的な判断が記載されます。通常は事故発生日から一か月後に警察側から入手することができます。
③監視カメラ映像
事故当時の映像ですが、事故発生現場によって必ずあるわけではありません。事件担当の警察署に行って閲覧の申請ができます。スマホ等で当該映像の映る画面を録画することはできません。
3、病院に診断証明書を発行してもらう
人を負傷させたような事故なら、被告も怪我をした場合が多いと思いますので、病院に診断証明書の発行を依頼します。
ぼくが被告になった場合でも、診断証明書を取得しないといけないの?
診断証明書を取得すれば、損害賠償の相殺を主張できる可能性があって被告には有利ですよ。
なるへそ。
それのみならず、診断証明書を取得したことで自らの負傷も証明でき、実務上、事情聴取や取り調べの日程について、検察官も被告の回復状況を考慮することはよく見られます。
4、対応策・終わりに
車両事故なんて刑事手続に沿って対処していけばいいじゃないか、と言う人は少なくないと思いますが、実際、車輌事故の処理はかなり複雑でケースバイケースになる場合が多いです。そこで、少なくとも警察の事情聴取に呼ばれる際、事前に弁護士と相談し同席してもらう方が安全です。
また、被害者と和解に達するかは検察官の起訴・不起訴・起訴猶予判断に大きな影響に与えるので、被害者との交渉は円滑に進んだほうが良いと考えられます。よって被害者との直接交渉よりも、第三者である弁護士を介在させるべきでしょう。
なるへそ。いっぱい勉強になったなあ。でもこれで終わり?
まだですよ。各刑事手続での留意事項、被害者との交渉方法および保険給付については、次の記事で説明させていただきますね。
はーい、じゃまたここで会おう。